同角尾根 そして遺言棚へ
丹沢山地とはご近所さんということもあって、付き合いが最も長い山地になるが、丹沢の秘境っぽい所にはほとんど足を踏み入れたことがなかったので、いつかは行ってみようと思っていたのが遺言棚。3段45mの滝で、丹沢三滝の一つに数えられ、残り2つは早戸大滝と大棚。計画段階では最短ルートを行くことを考えていたが、それもなかなか味気ないと思い、まだ踏み入れたことがなかった同角尾根をルートに加えることにした。今回は初見かつ難易度もそれなりに高そうな山行だったので、不安と楽しみが半々くらいの心持ちで挑んできた。
谷峨駅から同角尾根(ドーカク尾根)の入口まで約1時間ちょっとかけてウォームアップしてから同角尾根手前の沢に辿り着く。
沢を渡渉してから付近を見渡すと、ご丁寧に同角尾根の看板がかけられていて比較的分かり易いと思っていたけど、滑り易い土と落葉とそれなり斜度でなかなか登りにくかったので、半ば強行突破で這い上がる。途中から踏み代があったので、よく観察すればもっと良い足場があったのかもしれない。
登ってから少し行くと作業経路の木段があったので、それを辿りながら尾根まで上がっていく。尾根の登りなので見通しは良かったが、途中で滑落に注意しておかない箇所がそれなりにあったので、気が緩めず確実に足を進めていった。とはいえ、同角尾根の大タギリ付近までは方向と足場に注意していれば問題になるような個所はほとんど見られず、割と楽に進めていっている実感があった。
中盤以降はザレた白砂と急な傾斜が多く見られるようになり、特に下降パートでは木に掴まらないと滑り落ちる危険性があったので、登るより相当気を遣うことが多かった。
いよいよ同角尾根の核心部に近づいてきたと思いながら、大タギリの手前ピークで小休憩。
いよいよ核心部の大タギリには、事前情報通りの FIX ロープが設置されていた。情報や画像だけではどれくらいの難度なのか分からない部分もあったので、現地で自身の目で見てみてようやく難度の高さを実感。ロープがなかったらおそらく引き返していた(本音は引き返したくないけど・・・)。FIX ロープの状態を念入りに確認しながら、下りは慎重に降りたつもりだったが、砂がザラザラと音を立てて谷に落ちていく様を見て、まともに保持できそうな足場がないと思い、ロープと木の枝を頼る形で下降してきた。
こんな所を下ってきた・・・
登りパートでは、先ほどの下降よりも足を保持できる箇所がそれなりにあったので、それほど苦を感じることはなく登っていけたが、それでも FIX ロープは必要不可欠。ただ、下降として利用するのは正直御免被りたいパートだった。ということで、この時点で引き返すという選択肢は無くなり、先に進んで行かなければならない心境だったが、ここを越えれば後は多分大丈夫だろうと少し楽観的に考えるようになっていた。
この先も似たような下り登りがあったが、下りは丈夫そうな木に掴まりながら下降し、登りは足場を確実に確保しつつ登っていった。東沢乗越へ下る尾根を1本ミスするアクシデントがあったものすぐに立て直しができたので、時間ロスはほとんどなく計画通りに東沢乗越に辿り着くことができた。写真でしかお目にかかることがなかった「まつだけいさつの警告」を直に見ることができて少し感動した。
東沢乗越から同角沢の方を見た時に水が全く流れていなかったので、遺言棚の滝は期待できないながらも、ここまで来たのだから拝んで帰らないわけにはいかない思い、沢への滑り易い斜面をなんとか下りきって沢上に辿り着く。ここでも写真で良く見た独特な形状の滝口を見ることができ、今度は滝の直下へ側面に巻いて下降した。なかなか傾斜がかかっていたが、踏み代と赤テープを頼りに下降することができた。
念願の遺言棚に辿り着くことができたが、滝は涸れてしまっていて滝の形を成していない状態であり、わずかに流れていたと思われる水が凍結していた。時期が時期なだけに仕方なかったが、今回は無事に辿り着いただけでも良しとしようと言い聞かせることにした。
帰りは小川谷を経由して玄倉に戻るルートを辿ることにしたが、結果的にこのルートを選択したのは失敗だったかなと当時を振り返って強く思った。東沢乗越から東沢に下る急斜面から正直嫌な予感しかしなかったが、涸れ沢から水が流れ始めてから沢を挟んで両サイドを行ったり来たりしながら最適な足場を見極めつつ進めていた。道中でやたら艶が出ていた岩が多く出てきたので、よく見てみると岩の表面が凍結していた。今回はチェーンスパイクの類の滑り止めツールを持ってこなかったので「おいおい・・・」な感じとなり、さらに小規模な滝までが出てきたので、終盤はトラバースで沢から距離を空けることにした。
小川谷から玄倉までのルートは山斜面のトラバースがメインのルートだったので、まずは経路への取り付き地点を探してみると、山斜面方向に残っていた青と赤のテープがあったので、辿ってみたら、良い具合に経路を発見できた。行きにこのルートを使うと分かり易いテープ配置しているような気がした。初見で戻りとなると辺りを注意深く見渡さなければならなった。
経路に入る直前に良い感じに引っかかった木を発見。どうしてこうなった?
一部でトラバース路が崩壊。高巻きする方向に踏み代があったので、そちらから迂回可能。
西丹沢県民の森まで戻ってきて、ここでようやく一息つけた。いつもながらバリエーションルートはやはり未知の領域であるワクワク感がある反面、気を緩めることができないので、普段の登山道に比べて精神的な疲れが余計に溜まってしまった。
後はもうお家に帰るだけということで、大野山を経由して山北駅を目指す。途中、大野山の登山道の整備ぶりに「登山道って偉大だー」と感じずにはいられなかった。
今回の山行でまともにピークハントした大野山。富士山のシルエットが若干見える。
丹沢北西部の山々。こちらも踏破しがいのあるバリエーションが揃っている模様。
下山ルートの予定だった地蔵岳ルートは崩落していて利用できなかったので、車道で淡々と下っていくことになった。途中、新東名の建設現場の通行規制を求められたりする等があったが、山北駅まで何事もなく下山完了。
今回辿った同角尾根は、同角ノ頭まで伸びているので今回は全踏破までとはいかなかったが、核心部の大タギリ含めて険しさのレベルを実際に体験できたので、その点では大きな収穫だった。次回行く時は、同角ノ頭まで辿って行こうと思う。
[メンバー] Tatsu
[山行日] 2020.12.19(土)