西上州・妙義山星穴岳の記録
前夜発で道の駅下仁田に入り、テント設営後軽く乾杯して就寝。外は寒いが、空を見上げると満天の星が。明日の星穴岳に期待も膨らむ。
5時半起床後すぐに撤収してセブンイレブンへと移動。店中で暖をとりながらゆっくり朝食。その後、さくらの里第一Pへ進出するが広大なPに先行車両は 10 台前後。ヘルメットを被ったパーティーも支度をしていた。車を降りると紺碧の空の下、圧倒的な迫力で妙義山の岩壁が目前にそそり立っている。彼方には荒船山など西上州の山々が一望。しばし魅了される。
ゆっくり支度し予定通りの 8:00 中之岳神社の鳥居をくぐり入山する。
まず目に飛び込んでくる国内最大級という巨大な大黒天オブジュに多少戸惑いながらも、急な石段を登っていく。まずは中之岳神社本殿へ。今日の安全を祈り手を合わせる。
本殿の右の急な道をひと登りすると、展望台との分岐が。道標によると「すぐ」、とのことなのでみんな揃って展望台へ。
展望台から戻り少し進むと右に石門コースとの分岐。左の星穴岳方面はロープが張られていた。ここで全員がハーネスを装着し、いよいよバリエーションルートに突入か、というところで問題が発生。しんめいさんのビレイデバイスがないことが判明する。前日のモミソ沢のどこかで紛失していたようだった。幸い車に ton さんの予備の ATC があるとのことで、急遽取りに戻ることに。往復約 30 分。
金洞山の岩壁群を迂回し、ガレたルンゼを詰め上げると主稜のコルに出る。
ここまでの道は特に問題はない。稜線を西岳方面へ向かうが、踏み後は明瞭で要所にはテープも豊富。時折視界が開け表妙義、裏妙義の山々や榛名山なども望め気分は高揚するが、眼前には風化した脆い岩場が次々と現れ、万が一落ちたら、ただ事では済まないという緊張感がある。
しばらくして、ちょっと危なそうな岩場が出てきたので、トレランシューズの ton さんとガッツはここでクライミングシューズに履き替える。しんめいさんとたまみんさんは靴底の固いアプローチシューズでそのまま進むが。脆いホールドとスタンス。不安定な木の根や草を恐る恐る掴みながらの登下降となる。
西岳を越え、北側の尾根に迷い込みそうになるが、北西の主稜線に修正。
すぐに最初の懸垂下降のポイントに出る。覗き込むが下は立木が覆いかぶさりよく見えない。浮石も多く落石もありそうだ。50m ロープ連結での懸垂下降となる。トップの ton さんは途中ザイルが引っ掛かっての登り返しがあったようで、少しタイムロス。さらに後続のガッツとたまみんさんは今後のために懸垂の手順とシステムの確認をじっくりやったので、ここで後続の単独行者に追いつかれてしまった。
懸垂後も足場の不安定な急下降、いやらしいトラバースが何度も続き気が抜けない。ただ要所にはガイド山行用と思われる残置支点が何か所もあった。
星穴岳目前の最低鞍部から、少し登り返した岩小屋の前で小休止。ここで麓の町では 12:00 の鐘が鳴る。
稜線に沿っていくつもピークをもつ星穴岳に取り付くが、南面に明瞭な道がついている。しばらく進むと足元がスッパリ切れ落ちたトラバースが現れる。ミスや油断をしなければおそらく大丈夫なのだが、やってしまったら一瞬ですべてが終わってしまうことになる。
この後南面に続く道は行き詰まり、木を掴みながら直上し細いリッジを少し進むと南面に射抜きの穴への下降点が現れる。ということは頂上直下か。反対の北面にも懸垂の支点があるが、星穴沢への下降のためのものなのかもしれない。ここにザックをデポして、星穴岳の頂上に向かう。8m ほどのリッジは下りでは懸垂で降りたほうが無難ということなので、ton さんがロープを引いて上がり後続は引っ張りあげてもらう。
細長い星穴岳の頂上には手製の洒落たプレートが置いてあり、メンバーそれぞれがプレートを持っての撮影大会となる。風が強く吹き出し、すれ違うのもひやひやするほど狭い山頂ではあったが、楽しいひと時を過ごす。
懸垂でザックをデポした地点に戻り、いよいよ今日のメインともいえる、射抜きの穴への空中懸垂。さらに 40m 以上の連続懸垂。シビレるような展開で一気に高度を下げる。
このまま靴を履き替え、神社へと続く下山道を降りていくが、降り立った地点からは、ガリーを登り返すように導くテープがペタペタと付いていたのが気にはなっていた。私はこの時下山のことしか考えていなかったが、後で調べたらもう一つの結びの穴へ向かうルートのようだった。
下山道は時折落ち葉の雪庇を踏み抜きひやりとはしたものの、総じて歩きやすい道だった。轟岩がどこにあったのか確認できないまま中之岳神社本殿に到着。仲見世で食べた味噌おでんの味は今回特に印象に残った。小学校1年の給食で食べて以来コンニャクはずっと苦手だったが、下仁田のコンニャクはこんなに美味しかったのか!と思った。
下山後は八千代温泉・芹の湯に立ち寄る。渋い隠れ湯という感じで、雰囲気、泉質、コスパとも◎だった。
[メンバー] ton(L)、たまみん、ガッツ、しんめい
[山行日] 2020.12.13(日)