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信濃俣河内

 お盆の沢合宿のトレーニング山行ということで、南アルプスの信濃俣河内に行った。この沢は易老岳や仁田岳を源頭とする沢で、日本登山大系では光岳と深南部エリアに属する。光岳や深南部エリアは、森林限界を超えた景色の良い明るい山容ではなく、頂上も森林に覆われ鬱蒼とした景観が中心である。ゆえにアルプスらしい景色が望めず、登山道も大半が未整備なためあまり人気がないようだ。だが、その山々から端を発する沢は豊富な水に加え、シラビソと苔を中心とした独特の景観をつくる。信濃俣河内の「河内」というのは川という意味に近いそうだ。そしてこの山域は、河内や川という名の付く沢が多い。例として、逆河内、下西河内、栗代川などが挙げられる。これらの沢は大きな滝はほとんどない代わりに泳ぎを強いられる程の水量の多い沢である。光岳もリンチョウという美しい沢が源頭から流れている。光岳と深南部エリアは、この山域でしか味わえない山深い静寂の世界がある。それを堪能するべく、私たちは遠方から足を運ぶ。

 畑薙第一ダムを出発し、ダム沿いの林道を1時間ほど歩き、ダム上流部の河原、すなわち信濃俣河内の下流部に降り立つ。ここは増水すると水に沈むそうだが、今回は問題なく歩けた。ここからは河内の名のごとく幅の広い川を渡渉を繰り返しながら黙々と歩いていく。

 三俣と呼ばれる分岐に到着し、ここから第一、第二、第三とゴルジュが続く。シラビソに岩の表面に苔が生えていて、ここならではの美しい渓相だ。水量は豊富だが、流心を歩けないほどではない。渡渉とへつりを繰り返しながら軽快に突破していく。今回の旅ではロープは高巻きの懸垂下降にのみ使用した。

 第三ゴルジュを突破すると沢は穏やかになり、どんどん高度を上げていく。2日目はすべての滝を登りきった高度 2,200m 付近で幕営した。シラビソと苔むした土に沢のせせらぎが注いでいる。そこで焚火をしながらのんびり静寂を楽しむ。素晴らしいひとときである。1日目は釣りも試みたが、残念ながら釣果はなかった。

 3日目は1時間ほど詰めを歩いて藪漕ぎなく登山道に合流し、そこからひと頑張りで茶臼岳に到着。快晴の中、上河内岳、聖岳、遠くには北アルプスも一望できた。素晴らしい稜線歩きをしばし満喫し、ここから長い下山路を下る。この日は東京が 37 度という猛暑で、山中もとても暑かった。汗だくになりながらお昼過ぎに畑薙ダムに到着。距離 31 キロ、累積標高 2700m と3日間でよく歩き、良いトレーニングになったと思う。その中で、深い森の静かな山に心癒された旅であった。

コースタイム:
1日目 畑薙第一ダム駐車場[7:00]~信濃俣吊橋[8:00]~三俣[11:00]オリタチ沢出合[13:00]
2日目 T.S[6:30]~第二ゴルジュ出口[7:30]~箒沢出合[8:15]~西沢出合[10:40]~P2200幕営地[13:00]
3日目 T.S[5:15]~登山道[6:15]~茶臼岳[7:20]~畑薙大吊橋[11:40]~畑薙第一ダム[13:00]

[メンバー] セレナ(L)、UTi
[山行日] 2023.07.15(火) – 2023.07.17(木)

written by:セレナ
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会員は相模原・厚木エリアを中心に、
町田、横浜、大和、座間、海老名、八王子に在住し、
様々な登山ジャンルで活動している地域山岳会です。

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