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入会について

(No.42) 東丹沢 早戸川 冬の円山木沢

1967年1月15日
天気:小雪~曇り~快晴

 友人と二人で前晩に早戸川の林道終点から少し入ったところにある営林署の造林小屋に入った。部屋は4畳半の和室で浴室まであり、綺麗な小屋だった。夜半にガタンと引き戸を開けようとする音がしてビックリして熊かと思い、目が冴えて眠れなくなってしまった。
 翌朝はホエーブスで朝食をインスタントラーメンで採り、6:45 には出発した。堰堤の少し先に丸木橋があり、これを渡りコチンコチンに凍った円山木沢の出合いにでた。F1. 5m はきれいに氷結しいていた。ここでタニの 10 本爪アイゼンを装着した。ピッケルはエバニューのローツェ。シャフトは木製で 75cm。初めてのアイスクライミングなので、ここで試登としてホールドやスタンスをカッティングしたりして何回か登り下りたりを繰り返してみた。次の滝はいよいよ大きな 25m の F2。氷は厚く立派。でも氷のなかには水流が見えた。この滝を目当てに来たので巻こうなんて思わなかった。まずはよく眺めて観察した。僕が空身で正面左側から取り付いた。取り付きの 3m ほどは傾斜がとても急で悪いと感じた。カッティングしてU型のアイスハーケンを打って登った。傾斜は緩んだが、落ち口までホールドはピッケルによる連続カッティングで腕がとてもくたびれた。手袋は純毛厚手のもの。落ち口に2本目のアングル型のアイスハーケンを氷が割れながらもなんとか埋めて落ち口に立つことができた。そして確保用の残置ハーケンに達した。30m のザイルでは足りなくなってしまった。セカンドのN君は立ち上がりの 2~3m をノーザイルで登らざるをえず、苦労してロープ末端をつかむことができた。アイスハーケンは低温のためか思いのほか効いていて、ピックでほじくりセカンドは回収には苦労した。立ち上がりと落ち口直下が悪かった。このピッチには1時間もかかり完登した。
 核心は F3 のあるゴルジュ帯で結氷状態が悪く、落ち口のチョックストン越えがむずかしく、水流があり氷ははがれそうだったし、山靴に水が入りこんで足が濡れてしまいとても苦労した。

F2. 25m 大滝

F3. ゴルジュ帯 8m CS滝

(中略)

僕にとってこんな内容の登山は、いままでにはなかったことだ。そして稜線に登りついたときは寒風で凍りつき寒かったけど、二人とも『登ってよかったなぁ』という充実した気持ちでいっぱいだった。氷の登攀はひとくちに言って楽しい。もちろん焦ると楽しいと言っていられないけど。ステップを刻み、ホールドを刻んで少しずつ登る。岩登りにはない面白さを感じることができた。『上の滝』までは価値があると思った。丹沢の冬期において状態が良ければ価値ある沢ではないだろうかと思った。長いピッケルしか持ってはいないがバイルが欲しかった。ともあれ今までにやったことがない登山をすることができた。もう次に入るべき冬の谷➡奥多摩日原の犬麦谷が浮かんできた。
*造林小屋6:45→円山木沢出合7:10→三峰縦走路稜線14:15→本間の頭15:00→鳥屋バス停17:55→橋本駅19:20
*交通費330円、食料費250円

(1967年1月の山行記録から)


【追記】
 この山行はもう 55 年もまえのこと。古い山行記録が残っており抜粋してみた。高校2年のときのもの。クラス仲間のN君とは谷川岳一ノ倉沢2ルンゼや烏帽子南陵(㊟当時は稜線に抜けるのが当たり前)、積雪期の阿弥陀南陵などを登った。彼は 20 歳のとき、青学大山岳部メンバーとともに北鎌尾根を終えて穂先からの下りで滑落し、開放骨折の後遺症により後の人生にたいへんなハンディを負ってしまった。

(了)

written by:KuriG
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