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北岳バットレス
~皆で成し遂げた奮闘記~

半年前、mimiちゃんといつか北岳バットレスに行きたいと、会話したことから始まった。
全てにおいてまだまだ未熟でアルパインの経験のない私は、どうしたら行けるのか考えメンバーを決める。noyさん、tonちゃん、mimi ちゃん、佐和ちゃんの4名で、リーダーにnoy さんにお願いした。計画立案は、佐和ちゃんが担当。何が不足で何が必要かを吟味し半年の練習期間を設けて北岳バットレスを目標とした。

3月の広沢寺でのロープワークから始まり、4月三つ峠、5月城山西南カンテ、6月男山ダイレクト、7月天狗山ダイレクト、それぞれの課題と不足している技術を確認しながら練習を重ねた。

練習期間は半年でも、メンバー全員が揃っての練習は限界があり、不足する体力作りや悪路の歩き、登攀技術等は、個々人でのトレーニングが必要だった。
私以外のメンバーは、アルパイン経験者でありベテランも居るので気持ち的には緊張感はあまり無く、楽しい練習だった。しかし、知識、技術、体力、全てにおいて未熟である私が、他メンバーの足を引っ張る事になるかもしれない。その時は、ちゃんと身を引こうと決めて練習を重ねた。
そして、たまたま3人になってしまう事もあったため、3人リード交代も練習した。

本チャンとは、本番のチャレンジと言う意味なのか分からないが、いわゆる本チャンの間近になって、リーダーのnoyさんが事情により不参加になってしまった。残念でたまらなかったが、残りのメンバーで今まで練習してきた事を本チャンで頑張ろうと3人で行く事にした。

[ 天狗山ダイレクト ]


いよいよ、北岳バットレスへの登攀
予定通り、アタック前日は下見に行った。晴天の中の歩きは快適で翌日暗い中でも歩けるよう間違えやすい場所に目印の木を立てたりした。


アタック日の天候は、曇りのち雨、14時頃から雨が降るのを覚悟して、その頃には核心部を抜けていると想定し、早出に備えて20時には就寝。
翌日2時起床、2時半出発。予定通り取り付き下部岩壁に到着し、日の出を待った。美しい日の出を奏でながら登攀の準備にかかる。


2人組のパーティがやってきたが先行させてもらう。
1P目mimi ちゃんリード、Dガリー大滝は出だしが悪く第5尾根支稜から登る。

横断バンドは足場が悪いと事前情報を得ていたので慎重にコンテで進む。
第4尾根主稜取り付きで一息。1P 目のつるりとしたクラックは、幅が広く本当につるりとしてフィストも効かない😅足ジャムは効きすぎて足が抜けなくなる。危うく足残置!

1P目からハプニングはあったが、順調にマッチ箱のコルまで進む。ところが、この頃より天候が怪しくなり、パラパラと雨が降り出し視界は真っ白になって行く。
せっかくのお決まりショットは真っ白で景色は無い。気温も下がり待っていると寒さを感じる。

12時、懸垂終了時には雨が降ったりやんだり。6P目からはどんどん雨脚が強くなり、岩はびしょ濡れだった。つるつるの岩、絶対に滑るまいとお腹に力を入れて登っていく。
最後のピッチ、ナイフリッチでは、雨脚が強くなり、tonちゃんがリードするが一歩目を踏み出した直後に足が滑り危うく落ちるところだった。が、気を取り直し覚悟の再スタート。ビレイをしていたが姿が見えなくなり、無事にビレイ点までたどり着いたのかひやひやしたが、トランシーバーから「ビレイ解除」と落ち着いた声が聞こえホッとする。続いてmimiちゃんが行く。恐怖で怯えながらもtonちゃんのアドバイスを受け無事に通過。佐和ちゃんも「絶対に落ちない」とブツブツ念仏を唱えながら、何とか通過。

8P目、いよいよ最後の城塞ハング。恐ろしいナイフリッジをリードしてくれたtonちゃんの次は佐和ちゃんが行くしかないと決心した。荷物を下ろしいざ登攀!しかし、びしょびしょの岩は甘くはなかった。手も足もフリクションが効きづらく滑る。1ピン目のハンガーボルトはグラグラして信用できない。カムを決めたくとも、#2、#3 を持ち合わせてなかった。チムニーに挟まりながら、カムを引き上げてもらう。濡れたクラックにカムを決め、グラグラのハーケンに抜けるなよ!と言いながら静荷重を掛け、気持ちを静める。二度チャレンジするが、滑りそうな恐怖で先に進めない。交代か…「落ち着け!絶対に落ちない。」と心の中でつぶやきながら、決死の覚悟で行く。ビレイのtonちゃんとmimiちゃんは、私の墜落に備えていた。ようやく残地のカムまで手が届き A0 使いながら何とか核心部を抜けた。

一人づつの引き上げや荷物の引き上げに相当に時間を要した。
無事に登攀が終わり、一息したいところだが既に時間はかなり押していたため、休憩なしで山頂を目指す。16時、ようやく山頂に到着。


途中、肩の小屋で衛星電話を借りて、白根御池小屋に下山が遅れることを連絡し、ノンストップで小屋まで下山。一般道で良かった~😂


小屋に到着してからは、全身びしょ濡れの服を脱ぎ、乾いた服に着替え、取り置きしてくれた夕飯をむさぶる様に食べる。
身体が暖まった所で、お決まりのカンパーイ🍻

撤退か抜けるか…微妙な判断だが、今回は撤退の方が厄介だと判断し、雨の中の登攀を選択した。
雨の中の登攀も、練習してきた天狗山ダイレクトで経験してきたからこそ、焦らず落ち着いて判断する事ができたのだと思う。
登攀にかなりの時間を要してしまったが、雨の中での登攀を焦るより確実に安全に落ち着いて抜ける事を優先し、誰も急かす事なく最後まで緊張の中にも笑いあり、楽しい登攀となった。

今後の課題は、全体的にもう少し早く確実に登れるようになどまだまだ課題は山積みだが、一歩一歩、経験を積み重ね精進していきたい。
半年間、一緒に練習してきた仲間に感謝すると共に、今後も共にアルピニズムを追求するクライマーを目指したい。

[メンバー] ton(L)、佐和ちゃん、mimi
[山行日] 2022.08.19(金) – 08.21(日)

written by:佐和ちゃん
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会員は相模原・厚木エリアを中心に、
町田、横浜、大和、座間、海老名、八王子に在住し、
様々な登山ジャンルで活動している地域山岳会です。

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