【こだま】2023年 8月
もくじ
・こだま寄稿
私の大峯奥駈道(前編)―2020年10月17日~10月24日の記録―(maa3)
相模アルパインクラブの安全 DNA(かず)
・8月の例会
・新規掲載の山行ブログ
【こだま寄稿】私の大峯奥駈道(前編)―2020年10月17日~10月24日の記録―
元会員からの寄稿:maa3
2023.08.18
2020年11月執筆
去る 2019年5月10日~16日に、相模アルパインクラブのメンバー4人で南海高野線・九度山駅から高野山に至り、熊野古道小辺路を熊野本宮大社まで歩いたとき、その神秘的で森閑とした巡礼の道は私を熊野の虜にした。そして古希を迎えるまえまでに大峯奥駈道を踏破してみたいとの欲求が高まった。
吉野から熊野三山の本宮である熊野本宮大社まで、100 キロ・メートルとも言われている修験道の奥深い山道を6泊7日で単身抜けることができるだろうか、何遍となく自問自答を繰り返した。そして登山時期については5月または 10月と考えていた。詳細な計画を経て 2020年5月に実践することは難しいと判断し、2020年10月17日(土)夜~10月24日(土)とした。秋は涼しく好天が続くことから5月についで良いと考えられた。しかしこの時期、水場の乏しい縦走路ではその確保が最大の懸案と考えられている。水は常に 3.5~4リットルは携行するようにと物の本などにアドバイスされている。
期間:2020年10月17日(土)夜~10月24日(土)
目的:大峯奥駈道縦走;吉野~熊野本宮大社
メンバー:単独
[吉野~前鬼]
吉野から二蔵小屋へ
2020年10月17日(土)~18日(日) 晴れ時々くもり
夜行バスで新宿バスタを 21時30分に JR 奈良駅に向けて出発した。バスはコロナ禍の中にあって、感染の懸念から幾度となく逡巡したが、3列シートでマスク着用が義務づけられており、また新幹線で往復するより遥かに経済的であることからバス利用に決定をした。
出発のときはしっかりと雨が降っていたが、翌日曜に奈良駅に到着のときはすっかりと晴れて幸先の良さを感じた。
ここからは JR 関西本線に乗り換えて郡山駅へ、そこから徒歩 15分ほどで近鉄郡山駅に至り、更に橿原神宮駅から吉野線で終点吉野駅まで入る。毎度のことだがアクセスが大変である。
[吉野駅]
吉野駅前のベンチで弁当を食べながら周りを観察していると、少し先にロープウエイの乗り場とその脇をロープウエイに沿って上がっていくハイキング道が目に付いた。前日の夜行バスでやや寝不足ぎみであったため 560 円(荷物代込み)を支払って乗車時間が僅か3分のロープウエイに千本口駅に向けて乗り込んだ。
山頂の吉野山駅で乗車予定の 9:48 発、奥千本木行きのバスまでは小一時間あるので一つ先の金峯山寺(きんぷせんじ)まで歩いてみることにする。
[黒門]
吉野山への総門で、昔は公家、大名といえども馬や駕籠から降り、槍を伏せて通ったとか。
たまたまこの時期は仁王門が改修中で二体の仁王像に会うことはできなかったので本堂に回ってみた。金峯山寺(きんぷせんじ)は、白鳳年間(七世紀後半)に役行者(えんのぎょうじゃ)によって創建されたと伝えられる日本で最も古代の寺の一つだ。
後で分かったことだが、「大峯千日回峰行 ―修験道の荒行― 」を著した塩沼亮潤氏もこの金峯山寺で僧侶として修業をつんでおられたそうである。
[金峯山寺]
金峯山寺で安全登山の祈願を済ませ、仁王門前からコミュニティーバスに揺られること約 20 分で奥千本口に到着した。料金は 500 円で荷物代はナシ。全路線が曲がりくねった舗装道路だったので歩かなくて良かったと思った。
計画どおり奥千本口 10時20分に出発すると金峰神社に 10時30分に到着し計画書を提出。
[奥千本口修行門(登山口)]
[金峰神社]
さていよいよ大峯奥駈道縦走の開始である。身が引き締まる思いだ。四阿を過ぎて先に進むと二俣の林道に出るので左へ青根ケ峰へと向かう。やがて青根ケ峰への道標が現れたので左手に上がると 10 分ほどで山頂に着いた。眺望は全くなく、山頂から5分ほど下ると先ほど道標のあった林道と合流する。
この林道を忠実に進んで行くと四寸岩山への登路が2ケ所あり、最初の右に入る登山道はやがて同じ林道と合流するので2つ目の左手にある標識に従って登山道を上がる方がベターである。青根ヶ峰から四寸岩山へは2時間強で到達した。眺望は必ずしも良いとは言えない平坦で静かな山頂であった。
[石畳]
[四寸岩山山頂]
四寸岩山からは1時間ほどで二蔵小屋に到着するはずだが、前日が夜行バスであったため寝不足による疲労のため一刻も早く小屋へと気ははやるものの足がついて行かなかった。結局、二蔵小屋には1時間 15 分かかってしまった。この小屋はログハウス風で人気の高い小屋と聞いていたが、入口の戸や窓には板が打ち付けられていて使用ができない状態になっていた。コロナ禍で当分の間使用はできないと札が貼ってあり愕然とした。
やむを得ず小屋の前の空き地にテントを設営してから大天井ケ岳の巻道を左に往復 15分ほどかけて水を採りに行ってきた。この道は在来道で、先に進むと五番関まで行くことができるのであるが、沢を多く横切るためか崩壊箇所が多くて注意する必要があるとのことである。
[宿泊できなかった二蔵小屋]
(続く)
【こだま寄稿】相模アルパインクラブの安全 DNA
寄稿:かず
2023.08.25
昨年の会員が参加した山行で、他会の方の死亡事故が発生しました。本当に痛恨の極みで残念でなりません。月並みですが、このような事故は二度と起こさないよう今回の事故を教訓として今後の会員のみなさんの山行の安全に生かしていくことが私の役目と思い、事故の後、どうしたら事故を無くすことができるのだろうか、、とずっと考えていました。
今回の事故は滝の高巻きでの滑落でしたが、山にはいたるところに危険が潜んでいて、一定割合で大小の事故が発生してしまっています。事故の大半は、気の緩み、過信、ヒューマンエラーといった人的要因が主因となっています。今回の事故も、装備を手に持ったまま高巻きを行ったことが主因として挙げられており、気の緩みや過信もあったものと推察されます。
事故が起こる度に様々な分析がなされ、事故報告で原因、教訓が共有され、みなさんの山行の安全に生かされているものと思います。しかし、喉元過ぎれば熱さ忘れるで、時間が経過するとまた気の緩み、過信やヒューマンエラーによる事故が起きてしまっていることも現実で、このような悪循環を断たないと、本当の意味での事故の教訓が生かされたという状態にはならないと考えます。では、どうしたらよいか。。。
私なりにいろいろと考えてみたのですが、辿り着いた結論のひとつが「安全意識、安全行動の習慣化」でした。調べてみると、「習慣」とは「同じ状況のもとで繰り返された行動が、状況に応じて安定化し、自動化されて遂行される場合をさしていう。」とあります。つまり、安全意識、安全行動が習慣化し、安定化し、自動化されれば、「安全行動をするのが当たり前に感じる」「安全行動をしない方が気持ち悪い」「違和感を覚える」などの変化が生じ、気の緩み、過信、ヒューマンエラーなどの撲滅に繋げることができるのではないでしょうか。
では、どう習慣化するのか。。。モノの本にはいろいろと書かれていますし、長くなるのでここでは具体的なことは詳しくは述べませんが、1つ個人的に思うのは、まずは会のリーダー、影響力の大きい人、山行リーダーなどの会や山行をリードする人たちが安全意識をしっかりと持ち、安全行動をきちんと実践して習慣化し、それを他の会員たちに伝え、指摘し、広めていくことではないかと。そして、伝えられた会員がまた後に続く会員に伝承していく、そんなチェーンができれば会の DNA に安全意識、安全行動が刻み込まれていくのではないでしょうか。
1人であっても習慣化には長い時間がかかりますし、ましてや大所帯の会での習慣化は容易ではないと思います。おそらく何年も何年もかかることでしょう。しかし、不可能なことではないと思います。相模アルパインクラブの DNA に安全意識、安全行動が刻み込まれている、そんな日に向けて小さなことからでも地道に行動してくことが大事だと考えます。
習慣化と言っても特別なことをする訳ではありません。皆さんが普段から持っておられる安全意識、普段から行っておられる安全行動を、より継続的に行い他の人に広め、お互いに指摘し合って習慣にまで高めていく。次のステップでは、これまで持っていなかった安全意識を持つ、行っていなかった安全行動を取り入れる、そして上記と同様のやり方で習慣にまで高めていく。そんな風に広まっていけばと思っています。
一方で、ダイエットや禁煙などに代表されるように、習慣化は難しい側面もあります。習慣化を達成する強い信念を持ちつつ、無理せずできることから気長に継続的に進めて頂けたらと思います。現在、会では皆さんのご協力のもと「安全習慣化プロジェクト」を進めさせて頂いています。相模アルパインクラブの DNA に安全意識、安全行動が刻みこまれている、そう言える日が来ることを願っています。
(了)
【8月の例会】
日時:8月9日 19:30~21:00
場所:相模原市大野南公民館
出席:kany(司会)、しんご(議事録)、なべさん、みず、R1000、しんめい、たけ、Kimi、mimi、UTi、ふくいち、もん(12名)
例会後の懇親会
何時もと違う処
【新規掲載の山行ブログ】
◆ 2023.06.03 – 06.05 唐沢岳幕岩(畠山ルート、大凹角ルート) (しんご)
◆ 2023.07.15 – 07.17 信濃俣河内 (セレナ)
◆ 2023.07.22 – 07.24 北岳バットレス四尾根 (しんご)
◆ 2023.07.30 暑気払いに水根沢へ Let’s go! (しんめい)
◆ 2023.08.12 四ノ盾・五ノ盾には届かなかった - 烏帽子岩左稜線 - (しんめい)
◆ 2023.08.11 – 08.13 憧れの黒薙川・北又谷へ (セレナ)
おわり