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台湾•龍洞クライミング
―変わった事、変わってない事―

「The Nut Pich(5.8)」のクラック

 2023年年末、台湾・龍洞(ロンドンと読みます)クライミングに出かけた。 長かったコロナ禍もあり、久しぶりの海外クライミングだ。しかも龍洞は前回登りに行ったのは 2015 年、もう8年も前になる。
 この間に龍洞の岩場や、取りまく環境に変化があったのか興味津々であった。また前は秋に行ったが、今回は冬、天候や気温も気になる。現地トポの解説では、冬は寒いが陽がさせば暖かく、1~3月のように雨は降らないと書いてある。

 実際に行った時は雨の日が半分、TV の気象予報を見ているとしばしば「大陸の強烈寒波が南下して寒い」と言っていた。(と言っても気温は 15 度程度なのだが、亜熱帯に住む人々に取っては寒いのだろう)天気は西から次々と低気圧が来て、晴れと雨が交互に訪れるという感じだった。曇ると海岸沿いで風もあって寒いが、陽がさせば本当に暖かくTシャツで登れるくらいで変化が激しかった。

 宿泊は台北では無く、台北から 35km 程北にある基隆市にした。ここからだと龍洞の岩場までは 20km 程度、車なら 30-40 分程度で行ける。
 ただ今回は初めてレンタカーを借りてみた。今までは基隆から岩場まで公共バスで通ったが、行きは駅前からの定刻バスに乗れば良かったが、帰りのバスの本数が少ないのと時刻表が判らないので随分待たされる事が多かったからだ。
 しかし台湾のレンタカー事情がこれほど悪いとは思っていなかった。ちなみに日本でレンタカーを借りる際、免許証さえあれば他の条件はほとんど無いが、台湾では 65 歳以上には貸してくれない。また今回宿泊の基隆市は人口 36 万人、大型クルーズ船も寄港する台湾有数の国際港も持つ街なのだがレンタカー会社は無く、台北で借りるしかないのだ。
 また桃園空港周辺に数社あるレンタカー会社も、うら寂しい倉庫のような所で、空港周辺に多くのレンタカー会社が並ぶイメージとはほど遠い。

写空港近くのレンタカー会社事務所、台湾では大手だが?

 では何故台湾ではレンタカーが普及しているとは言えないのか?以下は私見となるが考察してみたい。
①、そもそもレンタカーの需要が無い(島の面積は日本の九州よりやや小さく長距離は鉄道?)。
②、街の人口密度が高いため街中ではバイクに乗っている人が多い。
車の脇をすり抜けたり、狭い道や歩道にまで侵入するなど交通マナーが悪い(我々は「バイクは何でもあり」と言っていたが・・・)為、車のドライバーはヒヤヒヤの連続であり、これでは外国人や観光客でレンタカーを借りようという人が少ないのも当然か?
 そんなこんなで台湾ではレンタカーが一般的では無いのだろう。

街中はバイクが多い

 おっと、台湾のレンタカー事情報告ではなかったので、この話は終わりにして本題に戻ろう。

 龍洞のクライミング事情だが、8年前と岩場の状況は変わっていない(ように感じた)。新しいルートもできているのかも知れないが、今回登ったエリアについてはトポと見比べても変化はないように思えた。
 龍洞はクラックをナチュプロで登る「トラッド」ルートが 7-8 割、残りがボルトの「スポーツ」ルートである。
 スポーツルートのプロテクションはペツルのボルトかケミカルボルトで、海沿いの腐食が激しい環境にも関わらず、傷んでいる様子は見られなかった。
 それでも変化は確実に起こっていた。実は初めて龍洞に行った時に登り、良いルートと感じたルートがあった。「ウエディング・ルート」というスポーツルートで、グレードは 5.7 と易しいのだが長さもあり、音楽庁エリアで見栄えのする演奏台のすぐ左という場所もあって、勿論三つ星だ。今回も当然登りに行ったのだが、取り付きに行くとボルトが見当たらない。「アレ?ここじゃ無かった?」と思ったが、間違うはずはない。しかし何回見ても終了点は見えるが途中のボルトは一切ない。諦めて別のルートを登っていると、現地の女性ペアが来たので「ウエディング・ルートは無くなったの?」と聞くと有るとの返事。ボルトが無い言うと、「今は皆ナチュプ ロで登ってる、良いルートだ」と指を立てた。

 なるほどナチュプロで登れるルートなら不必要なボルトは抜くという流れは、ここでも例外では無いということを納得した。
 勿論我々もナチュプロでウエディング・ルートを、それぞれリードし、改めて良いルートであることを実感したのであった。
 それ以外で変わったことはというと、ルートの終了点がラッペルリングから所謂「豚のシッポ」状の物(少し形状は違うが、ヨーロッパアルプスではルート上にランニングを取る為に良く設置されているあれである。)に変更されていた。4箇所にロープを通せば、結び返しをする事無く、そのままロワーダウンできるので便利だ。少しずつ打ち替えているのかも知れない。

終了点の打ち替えられたルート「Big Drum」

その他岩場以外で大きく変わっていたのは「基隆」駅が建て替えられ立派になっていた事だ。昔は小さな駅舎だったのが、2階建ての大きなコンコースのある駅舎になっていた。

夜の基隆駅(「車站」は鉄道駅のこと)

 切符の買い方も、前はお金を入れてトークンみたいな物を改札口に放り投げて入場していたと思ったが、現在はクレジットカードでも切符が買える。しかもそこは親日的な台湾、なんと券売機には日本語の表示も選択できるようになっていた。

校門口エリアでのクライミング

 今回は天気がイマイチだったが、懐かしい岩場でのクライミングは楽しかった。龍洞は 7-8 割がクラック、それ以外がスポーツルートなのでクラック技術は不可欠となる。
 しかしワイドはほとんど無いのと、基本はキャメロット #3 までのハンドサイズであり、足も置く事ができ、両手両足ジャミングというルートでもない。
 そう言う意味ではクラック初心者でも比較的リードしやすいルートが揃っている岩場である。

「Moby Dick(5.10a)」2p で登った

 日本から台北までは 4h、台北から基隆まで 1h、レンタカー事情は悪いが基隆に宿泊すれば岩場までをタクシーの往復利用(片道 30 分)という手もある。
 割と身近で、プロテクションもしっかり、ルートの数も多い海外クライミングの入門に最適な岩場ではないだろうか。
 そういえば、台北駅近くの山道具屋さん達も前と変わることなく営業していた。


 

他の参加者からの感想

初めての台湾で驚いたのは交通量、特にバイクの多さでした。慣れないレンタカーに左ハンドルでヒヤヒヤしました。  しかし町の人はとても親切で、私とKさんが道を間違えてホテルに戻れず道を尋ねるとわざわざ 20 分もかけて案内してくれました。他にも電車の切符を落とした時には拾って届けてくれたりと、親切な方が多いと感じました。
 食事も美味しく、一押しは火鍋です。日本人にも合う辛さで、安くてたっぷりのお野菜とお肉は忘れられません。台湾の人はあまりお酒を飲まないのか、火鍋屋にビールが置いてなくてびっくり、夜市でもお酒を飲んでいる人はいなくて、私とKさんは手拭いで隠して缶ビールを飲んでました。あんなに美味しいつまみがあるのに飲まないなんて・・・
 龍洞の岩場は広いですね。横にも縦にも大きくて、今回は一部のエリアしか行ってませんが、圧倒される岩場でした(特に音楽堂)。未だ未だ技術不足でリードはできませんでしたが充分楽しめました。岩質は凝灰岩? フリクションが良くカムも効きが良いので、また行く機会があればリードもトライしたいです。
 一番の難関は岩場までの移動でしょうか・・・ホテルから松山空港までは、タクシーでも 600 元でしたので、レンタカーでなくてもタクシー移動でも良いかなぁと・・・今回、手首の負傷で恐る恐るのトライでしたが、トップロープにしていただく事で良いリハビリになりました。
 皆な様と過ごせた4日間、とても楽しく過ごせました。どうもありがとうございました。
佐和ちゃん

台湾は雨が多いと聞いていましたが、滞在5日間中2日間雨となりました。
ただ龍洞の岩質は水分を吸収しやすく、海岸沿いで風が吹くため早く乾くそうです。
広いエリアの中には洞穴内のルートもあり、少しの雨であればクライミングできそうです。
スポーツとトラッドが半々位で、グレードは 5.4~5.13 まで多数あり、楽しめました。
 台湾は食事も美味しく快適なトリップとなりました。次回はもっと登れるようになってから行きたいと思います。
まり

 2014年、2015年、そして 2023年は3回目の龍洞クライミング。10 年前は雨の時はバスで古い町並みで有名な九条へ出かけたり、食堂で食べたりした。電車と路線バスでクライミングへ通い、地元の人々との会話もあった。お年寄りは日本語を話せる人が多く、若者はすぐ電車の席を譲ってくれたりと、とても親日的なものを感じた。
 今回はレンタカーでの移動でホテルと岩場の往復となり地元の生活や文化に触れる機会が少なかったと思う。
 しかしクライミングエリアのクラックは多様で面白く、グレードは 5.7 でも音楽庁エリアには素晴らしいクラックがある。何回訪れても登りつくせない沢山のエリア、クラックが龍洞の魅力。
 クライミングだけではなく、その土地の生活や文化も味わえる、私はそんなクライミングがいつも気に入っている。ルートを追いかけるのが好きな人も、折角行ったのだからその土地や人の良さを味合うのも良い、クライミングには様々な楽しみ方がある。でも一番は登っていて「心地よさ」を感じる事で、今回も充分それを感じることができた。一緒に行く仲間がいてこそ、それは成り立つので皆さんに感謝です。
静子

[メンバー] 純(L)、静子、佐和ちゃん、まり、K(元会員)、N(非会員)
[山行日] 2023.12.23(土) – 12.29(金)

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会員は相模原・厚木エリアを中心に、
町田、横浜、大和、座間、海老名、八王子に在住し、
様々な登山ジャンルで活動している地域山岳会です。

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