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国境稜線へのマルチピッチ2連戦

「16歳のとき、高校の山岳部員とともに、初めて本番に出かけた。当時は、谷川岳のアルパインルート入門といえばマチガ沢の東南稜であった。憧れの本番、魔の谷川岳の岩壁に挑戦できることで、うれしくて興奮していた。(中略)・・・
マチガ沢の東南稜は、3ピッチで終わる短いルートだが、最初の2ピッチがⅣ級あり、非常に苦労して、時間もかかった。登っているときは、恐ろしい思いもしたが、頂上へ抜ける広い草付を登り、山頂に達したとき、膨らんでいた夢のひとつがようやく達成され、清々しい気分だったことを覚えている。」(ROCK&SNOW BOOKS アルパインクライミング 遠藤晴行編 2001年初版)

台風一過の3連休後半、上武国境・二子山中央稜と、上越国境・谷川岳マチガ沢東南稜のマルチピッチ2連戦に行ってきました。オールドルーキーである私にも、血気盛んな十代の頃はあった訳で、山頂の道標の前に立った時にはいろんな思いがこみ上げてきて、思わずウルウルしてしまった。


二子山登山口駐車場から5分で股峠。
ここからひと汗かいて約15分で取付きのドラム缶の前に着いた。


1ピッチ目ガッツリード。
薄暗い植樹帯の中から、ピナクルテラスに出ると、明るく一気に視界が開けた。


2ピッチ目しんめいリード。
2ピッチ目以降は明るいリッジの、快適なクライミングが期待できる。


3ピッチ目tonがリードするが、クラックで踏ん張りが利かず一旦下降して、トップを交代。代わったしんめいは、ジムでは5.11をリードしているのだが、5.8のこのピッチをだいぶ苦労していた。


中間テラスで小休止。3連休でこの好天なのに、中央稜は先行者も後続もなく貸し切り状態。西岳の岩壁に、すだれ状にロープが垂れているのだが、人の気配はなく不気味だった。異星にでも取り残されているようで、まるで映画「猿の惑星」の1シーンにいるようだ。


4ピッチ目tonリード。
核心部はつま先立ちで、足を目一杯上げて這い上がるムーブになる。


5ピッチ目6ピッチ目とガッツリード。5ピッチ目の最後で、左の大きな岩の上に上がるところを、そのまま真っ直ぐ上に上がってしまったようだった。そのため6ピッチ目はガイド本推奨のコースから外れてしまい、浮石も多くてとても快適とは言えなかった。


6ピッチ目浮石の多い凹角を登るton
Wクラックのある本来のルートとはこの後合流する。


7ピッチ目はしんめいがロープをひいて上がり、肩がらみで確保してくれた。終了点はほぼⅠ峰の頂上。ここで装備解除して下山するのだが・・・


これがとんでもない急傾斜の崖道で、最後はハーネスをつけ直して懸垂下降しなければならなくなった。あとで確認すると、一般登山道はほかにあり、こちらはいわくつきの上級者用のコースだったようだ。ようやく緩傾斜になった頃には日没して、ヘッテン下山になってしまった。

マルチピッチでのリードやビレイもたくさんやらせてもらえたが、1日を振り返ると反省ばかりだ。クライミング技術以前に、身なり、ロープ捌き、ルートファインディング・・・。
だが、それもよしとしよう。今日の二子山中央稜を練習台、叩き台にしてあすの本番、マチガ沢東南稜に挑むつもりだったのだから。

その日の夜は月夜野の道の駅に泊まり、翌朝谷川岳に移動する。前週に足を捻挫し、回復が思わしくないtonは大事をとって観光に回り、しんめいガッツの2人でマチガ沢の東南稜を目指すこととなった。


ベースプラザ上の車止めまでtonに送ってもらい、国道291号を25分歩きマチガ沢出合に到着。国境稜線は遠くアプローチが長いなぁと感じた。


厳剛新道を進み、第一見晴から急な草付を下降して大滝下の沢床に降り立つ。踏み跡は明瞭だった。ふたりともラバーソールの沢靴で入渓。


緩傾斜の大滝はどこからでも登れそうだったので、水流沿いを登った。その後は広大なスラブ。明るく開けていて気持ちがいい。


巨岩帯を行く。


巨岩帯を抜けるとゴルジュが見えてくる。
CS滝だらけで水線突破は難しそう。


右岸ルンゼを大高巻きに入る。
途中に朽ちたハーケンが多数散見。歴史を感じる。


高巻き途中のしんめい
最後はトラバース気味のクライムダウンで沢床に降りる。


ゴルジュ最後のヌルヌルの滝。遡行で唯一ロープを出した。沢靴でも滑ったのでアプローチシューズではさらに難しいだろう。


間違って左の四ノ沢に入ってしまい、尾根を乗越して本谷へ復帰する。この辺りはガスったらなお一層迷いやすいと思う。


東南稜が目前に迫ってくる。中央右の凹角が登攀ルート。取付きでは先行の男女パーティが登攀準備中だった。左の要の滝付近まで偵察に行き、やはりここが取付きだと確認し、戻ってクライミングシューズに履き替える。


1ピッチ目ガッツリード。凹角を進み右の緩傾斜のスラブに乗越すところが核心部。RCCⅡグレードではⅣ級だが、ホールドもスタンスもヌルヌルでA0以外になす術はない。スラブを右にトラバースしてピッチを切る。


2ピッチ目しんめいリード。中央奥の先行パーティは凹角を直上したので、右のクラックルートを登る。ここも結構ぬめっていた。


3ピッチ目ガッツリード。手元のトポによると、稜線伝いにⅢ級のピッチのハズだが、何か違う。とりあえず直上し、垂壁下を左に行くと、先行パーティが岩陰に足元だけが見えた。「こちらはかなり悪い」とのこと。恐る恐るクライムダウンして戻り、シュリンゲが見えていた右のリッジ方向から登る。だがⅢ級というには、ちょっと厳しいのではないか?万が一落ちたら六ノ沢へまっしぐらだ。


3ピッチ目上部は左からのリッジと合わさり草付交じりになる。40mほど進み明瞭なビレイポイントがあったのでピッチを切るが、ここが終了点ではなさそう。


この上の6mほどの岩壁をしんめいにロープをひいて上がってもらい、おまけの4ピッチ目に突入。最後は肩がらみで引っ張り上げてもらい、ここがおそらく終了点か。ロープを仕舞い靴も履き替える。突然風が強くなりカッパを着込んだ。


山頂まで岩峰は続いていたが、左急斜面の草付に踏み跡らしきものがあり、それをたどると頂上へと続く広い草付に出た。遠藤晴行もここを登ったのだろう。


オキの耳。


山頂ではブロッケン現象がわれわれを祝福?


鞍部から東南稜を振り返る。ロープウェーの最終には間に合わないので、西黒尾根を下降したもののヘッテン下山になる。2人とも疲労困憊だった。暗闇の中、たどり着いたベースプラザ上の車止めには、tonが迎えに来てくれていた。ton。ありがとう!そして、しんめい。ありがとう!

帰りの関越道で、瞼を閉じると長かった1日の記憶が蘇ってきた。またの来る日を心に誓い、ありがたく後部シートで横にならせてもらった。

二子山中央稜
[メンバー] しんめい(L)、ton、ガッツ
[山行日] 2021.09.19(日)

谷川岳・マチガ沢東南稜
[メンバー] しんめい(L)、ガッツ
[山行日] 2021.09.20(月)

written by:ガッツ
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会員は相模原・厚木エリアを中心に、
町田、横浜、大和、座間、海老名、八王子に在住し、
様々な登山ジャンルで活動している地域山岳会です。

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