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2/28 早春の弘法山、権現山

 「ボキッ」、それは想像していたより軽く高めの音だった。骨が折れる時にはボキッって音がすると聞いたことがある。自分もそれを聞くことになるとは。。。

 左足が軽くスリップした。あんなスリップ、通常ならすぐに体勢を立て直せるくらいの軽いスリップ。でも、7~8時間ずっとボッカをしてきてよれた足にはもう体を支える力は残っていなかった。
 足がよれて踏ん張りが利かなくなっていたことはわかっていた。普段なら、ペースダウンしたり休憩したりするところ。言い訳は沢山ある。ゴールの阿夫利神社の屋根が見ようかというあと少しのところ、一人最後尾になってしまいみんなを待たせてはいけない、トレーニングとして多少の無理を許容する気持ちもあった、通常は山頂で重しを捨てて下山するところ、下山のトレーニングもと思い、重いザックのまま下山した・・・みんなみんな後の祭り、虚しい言い訳。
 手術、入院、山での大きな怪我は初めてだった。思うように動かない足、動かす度に痛みが走る。こんなんでまた山に登れるようになるんだろうか。また普通に日常を送れるようなるのだろうか、また山に登れる日が来るのだろうか・・・そんな不安を抱きながらリハビリを続ける日々だった。

 あれから約3か月半、骨の中心に埋め込まれたチタン製の棒で支えられた右足、がんばってリハビリをして、漸くこの日を迎えることができた。

 民家の脇の、こんなところ?と思うような小道を進むと、すぐに林の中の尾根道に出る。一歩一歩、足の具合を確かめるようにゆっくりゆっくりと登る。アップダウンに富んだゆるやかな尾根道。2月も最終日、日差しは暖かいけど、さすがに時折吹き抜ける風はまだまだ冷たい。登山道の脇には、一生懸命に春の到来を教えるように水仙が咲き誇る。木々の中には一足早く若葉を伸ばしている木も。ゆっくりゆっくりと早春の尾根道を辿っていった。
 弘法山からは、江の島、三浦半島、遠くには房総半島も。いつもは足早に通り過ぎていた弘法山の由来の看板も、ゆっくりと読んでのんびりと。あまり気に留めていなかった弘法山も、いろいろな人々の想いの詰まった山だったことを、今さらながら改めて知った。その昔の様子に思いを馳せながら、改めて山頂をぐるりと見まわしてみた。
 弘法山から少し足を延ばすとすぐに権現山だ。弘法山と権現山の間の桜並木は神奈川でも有名な桜の名所のひとつ。さすがに染井吉野の蕾はまだまだ硬い。でも、早咲きの河津桜は少し濃いピンクの花を咲かせている。三分咲きくらいかな。染井吉野の淡いピンクの花も綺麗だけど、河津桜の少し濃いピンクの花々は、早春のまだまだ枯れ木色の山に映えて綺麗だ。

 権現山の山頂は広くて見晴らしがいい。丹沢の山々、伊豆方面、秦野の街々、湘南、三浦半島、房総半島まで。富士山も、お昼には雲がかかることが多いけど、今日はお昼でも白く光る山頂からたおやかな裾野までくっきりだ。がんばってリハビリしたご褒美かな。山頂でのコーヒー、街とは違ったゆったりとした時間が流れる。自分の足で山に登れる、そんな当たり前で普通のことのうれしさを、コーヒーの苦みと一緒にしみじみしみじみとかみしめた。

 日が傾くと、山に当たる陽は少し赤みを帯びてなんとなく寂し気な雰囲気になってきた。山は登るより下山の方が難しいと言われる。怪我した足にも、下山の方が負担は大きい。ゆっくりゆっくり一歩一歩確かめながら下山する。やはり下山だと、膝に痛みが走るが、ストックを上手く使いながらゆっくりと下る。一歩一歩、また一歩。憧れの山々、憧れのルートにも近づけているのだろうか。。下るにつれて、枝の間から見え隠れする民家の屋根が次第に大きくなっていく。街の喧噪も近づいてきた。

[メンバー] かず、非会員(1)
[山行日] 2021.02.28(日)

written by:かず
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会員は相模原・厚木エリアを中心に、
町田、横浜、大和、座間、海老名、八王子に在住し、
様々な登山ジャンルで活動している地域山岳会です。

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